前回,新型コロナウイルスに合併する神経症状に関して読みました(下記)
その後,JAMA neurologyに中国からの報告があり,今回読んでみました.
今回の論文
Neurologic Manifestations of Hospitalized Patients With Coronavirus Disease 2019 in Wuhan, China
JAMA Neurol. 2020 Apr 10.
PMID: 32275288
DOI: 10.1001/jamaneurol.2020.1127
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2764549
方法 Methods
中国の3施設での後ろ向き研究.
2020年1月16日から2020年2月19日まで,COVID19と診断された症例が対象とした.
COVID19はRT-PCRで診断.
COVID19の重症度(重症or非重症)はAmerican Thoracic Society guidelines for community-acquired pneumoniaを用いて評価した.
神経徴候は2人の神経医で確認された.感染拡大を避けるため、診察は最小限となった.
急性脳血管障害は症状と頭部CTで診断した.転換は,臨床像と時間経過に基づいて診断した.
結果 Results
n=214例 (mean (SD) 年齢 52.7 (15.5) 歳, 男性 40.7%)
症状:発熱 61.7%,咳 50%,食思不振 31.8%.
重症例 41.1%,非重症例 58.9%.重症例の方が高齢で高血圧罹患率が高い.
神経症状の合併
78/214例(36.4%)で何らかの神経症状がみられた.
神経症状は重症例で有意に多い(重症例 45.5% vs 非重症例 30.2%,P=0.02).急性脳血管障害,意識障害,筋障害とも重症例で有意に多い.
脳血管障害と意識障害の神経症状は早期段階で出現する(中央値1-2日).
急性脳血管障害を合併した6例中,2例は受診時にCOVID19を疑う症状(熱,咳など)がなかったが,CTで肺炎を認め,後にCOVID19と診断された.
頭痛,発熱で受診し,初期精査(採血やCT)でCOVID19を示唆する所見はなかったが,数日後にCOVID19の症状や所見(咳,胸部痛,リンパ球減少,CTでのスリガラス影)が出現した,検査でCOVID19の診断となった.
中枢神経障害
53/214例(24.8%)で中枢神経症状がみられた(めまい16.8%,頭痛13.1%,意識障害 7.5%,脳血管障害 2.8%)
- 中枢神経障害合併例 vs 非合併例:神経障害合併例で有意にリンパ球数低下,血小板低下,BUN高値を認めた.
- 重症例での中枢神経障害合併例 vs 非合併例:神経障害合併例で有意にリンパ数球低下,血小板低下,BUN高値を認めた.
- 非重症例での中枢神経障害合併例 vs 非合併例:検査結果に差はなかった.
重症例で痙攣(四肢ぴくつき,口から泡,意識障害などが3分間持続)が1例あり.
末梢神経障害
19/214例(8.9%)で末梢神経症状がみられた(味覚障害 5.6%,嗅覚障害 5.1%).
末梢神経障害の有無で検査結果に差はなかった(重症例あるいは非重症例に絞ったサブグループでも差はなかった)
骨格筋障害
21/214例(10.7%)で骨格筋障害を認めた.
- 筋障害合併例 vs 非合併例:有意に好中球上昇,リンパ球低下,CRP高値,D-dimer高値を認めた.
筋障害合併例は,肝障害や腎障害などの多臓器不全を伴いやすい
重症例では,リンパ球低下,より重度の肝機能障害,より重度の腎障害を認めた.
まとめ
COVID-19感染者,特に重症例では神経症状に注意する必要がある.
感想
内容的には以前の報告と類似した部分が多いようです.神経症状の頻度としても前回と同程度でした.
中枢神経症状や筋障害が重症例で多いというのは,全身状態や組織障害にもよる部分が多いのかなと思いました.
味覚障害,嗅覚障害が特徴,とよく耳にしましたが,この報告ではそこまで頻度が高くなく,味覚嗅覚障害がなくても否定材料にはならないなと感じます.
また,脳卒中や頭痛で入院後にCOVID19が発覚するケースも記載されており,実臨床上は悩ましいと思いました.
さらに他の報告もあり,引き続き情報収集していきます.