前回,慢性無菌性髄膜炎の症例報告を取り上げました.
亜急性髄膜炎や慢性髄膜炎,再発性髄膜炎について,なかなか原因がつかめないことを経験したことがあります.
慢性髄膜炎の原因は多々ありますが,クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は恐らく非常にまれな疾患と思います (今のところ経験したことがありません).
CAPS以外には,どのような疾患があるのか,どのようにアプローチしたらいいのか,など,今後のために調べたくなり,今回,文献を探してみました.
臨床像や検査について知りたかったので,各疾患の治療については割愛しました.各論はそこまで詳しくないため,成書をご参照ください.
今回の文献内には取り上げられていなかったのですが,ベーチェット病などの他の自己免疫疾患も原因になると思います(いずれ文献を追加してこのページを改定したいです…)
硬膜炎(文献では,IgG4陽性硬膜炎)も髄膜炎の範疇として記載されていました.髄膜炎というと,軟膜炎leptomeningitis(軟膜とくも膜の炎症)と硬膜炎pachymeningitis(硬膜の炎症)に分類し,それらは別々で論じられることが多いと思います.通常,髄膜炎と言うと前者の軟膜炎leptomeningitisを指すのですが,今回は文献の記載に沿って,硬膜炎も含めて記載します.
※検査について,本邦では保険未収載の項目も取り上げているため,ご注意ください.
慢性髄膜炎の定義
臨床症状が4週間以上持続し,髄液細胞数上昇が証明される.
慢性髄膜炎の主な原因
原因疾患は広範囲に及ぶ.
最もcommonな3つの原因は 真菌,結核,腫瘍 である.
Mayo clinicでの慢性髄膜炎37例の報告では,その半数が原因不明であった.
通常,従来の検査では1/3の症例が原因不明となり得る.
慢性髄膜炎への臨床的アプローチ
病歴聴取
臨床経過を確認することが重要である(しかし,発症時期が不明瞭となることがある)
- 詳細な臨床経過,症状のパターン,社会歴(性交歴など),予防接種歴,投薬歴(NSAIDs, IVIG)などを確認する.
- 渡航歴,職業歴,嗜好.
- 動物や毒物,感染者との接触歴,生物や不十分な調理物との接触の有無.
- 病院施設勤務者かどうか.刑務所勤務者かどうか.
診察
- 全身性の症状:皮疹,関節痛,口腔/陰部潰瘍などの有無を確認する.
- 専門科での評価
・眼科:感染徴候,眼球所見
・リウマチ科:併存する関節,筋骨格所見
・感染症科:transplant medicine,tropical diseases
・公衆衛生学:流行している感染症の情報や診断アプローチ.
慢性髄膜炎での検査方法
病歴や疫学的因子,身体所見などから,診断のための検査を選ぶ.
画像検査
髄液造影効果のパターン(例:pachymeningeal,leptomeningeal,basal meningeal)は,鑑別を絞り込むのに有用である.
髄液検査
髄液検査はしばしば複数回行われる.10mL以上を,3回採取し,結核,真菌,腫瘍(特にリンパ腫)の検査を行う.
髄液検体を遠心分離し,時間をかけて顕微鏡で観察することで検出感度が上昇する(特に真菌と結核)
髄液所見は時間経過で変化する.結核や真菌では,感染初期は多核球優位だが,時間経過すると単核球優位となる.
髄液糖低下と初圧上昇は,非定形な細菌感染や真菌感染が示唆されるが,神経嚢虫症や神経サルコイドーシス,癌性髄膜腫炎などでもみられる.
生検
MRIで造影効果を認めた場合は髄膜/脳生検が有用となることがある.
既報告:37例の原因不明の慢性髄膜炎では,生検で39%が確定診断となった.造影効果の認めた80%で原因診断できたが,造影効果のない症例では 9%しか診断にならなかった.
慢性髄膜炎の原因疾患
結核
免疫不全患者でみられる,侵襲性結核感染である.
HIV感染に合併することが多い.免疫正常者での発症は稀で,多くは発展途上国でみられる.
結核性髄膜炎の診断は困難なことがある.
症状・症候
頭痛,熱,体重減少,嘔気,脳神経麻痺など.結核による局所症状,粟粒結核,中枢感染などがみられる.
検査
頭部画像:閉塞性の水頭症と脳底部の髄膜炎を呈する.
肺の画像:空洞病変や肺門部リンパ節腫脹,気管支肺胞浸潤を呈する.
髄液検査:通常,非特異的パターンである,頭蓋内圧亢進,リンパ球優位の細胞数上昇,蛋白上昇,糖低下を呈する.HIV感染時は,全身性の免疫低下のため,髄液細胞でリンパ急上昇がみられないことがある.髄液を30ml以上採取して,顕微鏡検査を十分時間をかけて(30分以上)観察することで,感度52%となる.
髄液培養では,Lowenstein-Jensen法も結核菌検出に効果的で,90%の症例で検出できるが,結果が判明するまで数週間かかるため,実用性は限られる.
結核菌PCRは補助診断として役立ち,100%に近い特異度だが,感度は30~50%である.(追加情報:近年はnested PCRも行われるが,文献内には記載なし)
梅毒
髄膜炎は進行期梅毒の約25%で生じる.
症状
頭痛や嘔気,光過敏,脳神経麻痺(Ⅶ,Ⅷ)を生じる.脊髄癆,認知症,全身性麻痺となる.
検査
VDRLとRPRがスクリーニングのゴールデンスタンダードである.
晩期梅毒では神経梅毒合併の否定のため髄液検査を行う必要がある.
髄液検査は,細胞数5~10以上,蛋白40以上,髄液VDRL陽性の場合診断に有用である.VDRLの特異性は高いが,感度が低いため陰性でも除外できない.
髄液PCRは賛否両論あり,神経梅毒の50%で陰性である。
ライム病
疫学
北アメリカでは鹿ダニであるIxodes scapularisが媒介する.
36~48時間ダニ咬傷が持続することでB. burgdorferi.が移行する.流行地では,春から初秋までダニの活動機となる.
症状
初期症状として遊走性紅斑,円形状皮疹を生じる.皮疹は時間経過で拡大し,中心部が白くなり,ring状あるいはbulls eye様を呈する.皮疹は,数cmから体幹ほどの大きさまで増大する.多巣性のこともある.
感染初期には発熱,頭痛,体幹部痛,倦怠感も伴うことがある.
約10~15%で神経系が障害される.
リンパ球性の髄膜炎,脳神経炎,神経根炎,多発単神経炎などを生じうる.未治療の場合,脳炎や脊髄炎などの重度の神経症状を呈するが,稀である.
検査
中枢性ライム病はELISAを含めたtwo-tier serologic testを行い,Western blotで確定する.
血清検査:リンパ球性髄膜炎と抗体index陽性となる.
髄液検査:PCR検査は感度が良くないとされ,ルーチンでのPCRは推奨されない.
画像検査:非特異的であるが,脳脊髄MRIでは髄膜と脳神経,脊髄神経根に造影効果を認めることがある.
クリプトコッカス
疫学
HIV/AIDS流行地ではクリプトコッカスでの死亡が多い(サハラ以南のアフリカだけでも年間100,000人以上が死亡している).
最も多いクリプトコッカスは,Cryptococcus neoformansであり,世界的に広く分布し,汚染された土壌や鳥の排泄物,樹皮などから検出される.
免疫不全者は,Cryptococcus gattiiによる慢性髄膜炎のリスクが有る(ブリティッシュコロンビア州と大西洋岸北西部でアウトブレイクが発生した).
リスク因子
HIV/AIDS,移植後,担癌状態,特発性CD4+リンパ球減少症などの免疫低下症例など.
予後
HIV患者は,非HIV患者は患者より急速に悪化し,頭蓋内圧亢進により意識障害が悪化し死亡する.迅速かつ繰り返し頭蓋内圧をされる治療を行うこと,抗真菌薬を使用することが重要である.
抗真菌薬治療を行っても,死亡率は少なくとも25%以上である.
検査
髄液ではリンパ球優位の細胞数上昇,蛋白上昇,糖低下などを呈する.免疫不全の場合は,細胞数や蛋白が正常に近いことがある.
真菌培養は高い感度で診断と病原体確定に有用であるが,発育が緩徐であるため偽陰性が生じうる.診断精度を高めるため,髄液量を多く採取する.
墨汁染色での検鏡は簡便な検査法であるが,培養と同様に髄液中の菌体が少ない場合は偽陰性となりうる.
髄液クリプトコッカス抗原は高感度,高特異度であり,初期検査で検討するべきである.
クリプトコッカス抗原に関するラテラルフローアッセイは物資が限られる状況で有用と考えられている.
血清クリプトコッカス抗原の結果でクリプトコッカス髄膜炎を否定するべきではないが,高リスク症例では神経症状発症の数週間前から陽性となりうる.
ヒストプラズマ
疫学
ヒストプラズマ感染は,オハイオ州やミシシッピ川での居住・旅行がリスクとなる.(ヒストプラズマは世界的に分布している)
アメリカ中西部で最も多く感染し,土壌からヒストプラズマが検出される.鳥やコウモリなどの便でもみられる.
肺病変(胸膜疾患,空洞病変,縦隔病変など)や呼吸器症状を呈することが多い.
播種性となった場合は中枢神経症状を呈することもある.中枢神経症状は,多い場合は播種性ヒストプラズマ症の剖検例で1/5でみられる.免疫不全例でリスクが高い.
血行性播種することで慢性髄膜炎となり,脳底部の髄膜病変として見られることが多い.
診察
通常の神経診察に加えて,播種性を示唆する徴候の確認のため,肝脾腫,眼科的診察,リンパ節腫脹,肺空洞病変有無などを含め,全身診察・検査を行う.
検査
髄液では,他の真菌感染と同様に,蛋白上昇,糖低下,単核球優位の細胞数軽度上昇を認める.
髄液培養陽性は50%未満であり,培養での発育が遅いため診断が遅れる.髄液培養だけでなく,疑い例全例で髄液抗原や抗体検査を行うべきであり,それらは50%は陽性となる.
播種性感染が疑われる場合は,尿や血清のヒストプラズマ抗原検査を行うべきである.また,組織検査も診断のために行う.
ブラストミセス症
疫学
アメリオの東南~南中央部,五大湖周囲,アフリカで見られる.
ヒストプラズマと同じように,呼吸器症状が最も多い症状であり,特に免疫不全時にはARDSとなって重症となりうる.
肺外病変としては,皮膚,骨,泌尿器症状も伴いやすい.その中でも皮膚症状が多く,播種性ブラストミセス症の手がかりとなる.特に,顔面と頸部に膿疱病変が生じ,痂皮化する.
神経合併症は10%未満で生じる.脳底部髄膜炎が最も多く,脳室炎や水頭症を生じると予後が悪い.
検査
確定診断は培養結果や脳生検や他組織の病理学的所見で診断する.
髄液培養の陽性率は50%未満である.検体量を多くするあるいは脳室液検体で感度が上昇する.
Blastomyces dermatitidis抗原は,診断に有用である.しかし,ヒストプラズマなどの他の真菌と交差反応する (2018年の症例報告で,髄液のブラストミセス抗原を定量的酵素免疫測定法で測定する有用性が報告された)
コクシジオイデス
疫学
Coccidioides immitis と Coccidioides posadasiiでコクシジオイデス症を生じる.同菌は温暖で乾燥なアメリカ南西部,メキシコ,中央アメリカで流行する.
農家や建築作業員などが高リスクとなり,土壌から浮遊する胞子に曝露する.
他の真菌と同様に,多くは市中肺炎を呈する.まれに(約1%)播種性病変を生じる.播種性では,皮膚や皮下組織,筋骨格系,髄膜病変を生じる.妊婦や高齢者,免疫不全例,フィリピン人,アフリカ系アメリカ人などが重症,播種性のリスクとなる.髄膜炎は播種性コクシジオイデス症で最も多くみられ,通常,脳底槽の肉芽腫性感染を生じる.髄膜炎は脳膿瘍や血管炎による脳梗塞・脳出血と関連する.40%で水頭症を呈する.
検査
CNSコクシジオイデス症では,髄液に好酸球を認める特徴があるが,全例で見られるわけではない.
髄液や生検の培養で診断を確定するが,既報告では陽性率が30%未満であるとされる.
培養や病理組織には限界があるため,血清抗コクシジオイデスIgM, IgG抗体が有用である.血清検査では,免疫固定法や酵素免疫法などの方法があるが,検査法によっては偽陰性や偽陽性がある.抗体検査の感度は約70%とされる.
そのため,髄液抗体と抗原を追加で検査することが推奨される.播種性コクシジオイデス症が疑われる場合は尿と血清の抗原検査を提出する.
アスペルギルス
疫学
世界的に分布する真菌で,胞子を吸入すること感染しうる.侵襲性の場合は治療が遅れると致死的となりうる.
免疫不全者,特に臓器移植患者では播種性アスペルギルス症となる.
アスペルギルスは血管侵襲性で,小血管,中血管のCNS血管炎による神経症状が最も多い.髄膜病変はまれな合併症である.もし髄膜病変がある場合は,通常,血管炎や膿瘍に合併する.髄膜におよぶ侵襲性CNSアスペルギルス症は,副鼻腔病変の直接浸潤でも生じうるが,血行性播種より稀である.
検査
診断のための髄液培養の陽性率は低い.アスペルギルスPCRは有用な方法であり,血清の検査で感度特異度とも高い.最近の小規模な研究ではアスペルギルス髄液PCRの感度は75%と報告されているが,より大規模な研究が必要である.
髄液ガラクトマンナン抗原は80%以上で上昇するため,疑いが強い場合は施行を検討する.
髄液(1,3)-b-D-glucanは真菌細胞壁の成分であり,補助診断として推奨されるが,アスペルギルスに特異的な検査ではない
培養や組織学的検査のため,時に脳生検が考慮されることがある.脳膿瘍がある場合は特に有用である.
カンジダ
口腔内,胃腸,尿路などに常在する真菌.
侵襲性カンジダ感染のリスクとして,人工物留置状態や静注薬物使用者,免疫不全者,移植後症例,HIV/AIDS,早産児,無顆粒球症,コントロール不良の糖尿病などが挙げられる.
中枢病変は,通常,播種性カンジダの時にみられ,ハイリスクの患者,時に早産児や神経外科手術後で生じうる.
死亡率が高く,報告によると80%以上で死亡するとされる.
検査
疑った場合は,腰椎穿刺と眼底検査を行う.
眼科的診察で硝子体炎や脈絡網膜炎などの眼合併症の有無を調べる.
カンジダ性髄膜脳炎は急性から慢性の経過で出現する.
他の真菌感染と異なり,髄液糖や白血球数は正常である.髄液培養は,急性髄膜炎の方が陽性率が高く,70%で病原体が検出されるが,慢性例では感度が低くなる.髄液(1,3)-b-D-glucanは有用な検査であるが,真菌感染の非特異的なマーカーである.
レプトスピラ
疫学
感染した動物の排泄物を介して感染する
最も多いのが熱帯や亜熱帯地域である.東南アジアやカリブ海地域,南アメリカなどでアウトブレイクが生じる.特にモンスーンやハリケーンなどを含む雨季に水が汚染されやすくなり,感染しやすくなる.アウトブレイクはアメリカでも生じ,南部地域の汚染された池でトライアスロンを行ったことで生じた.
症状
感冒症状や,ぶどう膜炎,血小板減少,神経症状(髄膜炎症状.典型的には進行期に生じる)を呈する.
検査
2014年の研究で,免疫不全者で従来の検査が陰性であった神経レプトスピラ症におけるunbiased metagenomic deep sequencingの診断有用性が強調された.
寄生虫
熱帯,亜熱帯地域を訪れた人,或いはそのような住む人では重要である.
Echinococcus, Strongyloides, Acanthamoeba, Angiostrongylus, Taenia solium, Baylisascaris, Toxoplasma speciesなどが原因となる.
薬剤性
NSAIDs(イブプロフェンが最もcommon),免疫グロブリン,抗菌薬(ST合剤),免疫抑制薬,化学療法,抗てんかん薬(ラモトリギン,カルバマゼピン)などが原因となりうる.
薬剤性髄膜炎では,通常,薬剤への曝露からすぐに発症し,薬中止後はすぐに改善する.
髄膜の炎症や免疫が関係した過敏反応が関与していると考えられるが,詳細な機序は不明である.
類皮嚢腫による化学性髄膜炎
類皮嚢腫は症候期には縮小していることがあり,休止期に画像評価することが奨められる.
自己免疫性,炎症,血管炎機序
様々な自己免疫,炎症機序が感染性と紛らわしく,慢性髄膜炎を生じうる.
全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,シェーグレン症候群,神経サルコイドーシス,ベーチェット病,IgG4関連疾患,Cogan症候群,Vogt-小柳-原田病,原発性中枢神経系血管炎などが慢性髄膜炎の原因となりうる.
神経サルコイドーシス
臨床症状は中年期で発症することが多いが,神経症状はどの年齢でも生じうる.全身症状の数年後に神経症状が生じることもある.
神経合併症は約10%で生じる.
髄膜病変は最も頻度が高い.慢性髄膜炎では髄膜病変,脳神経麻痺,下垂体病変などを生じる.
検査
病理学的所見で確定診断となるが,髄液や血清学的検査が補助診断として重要である.
髄液では単核球優位の細胞数増多,蛋白上昇を伴う.少数例で髄液糖低下を示す.髄液ACEはサルコイドーシスに特異的であるが,感度は40%未満である.
全身評価のため,FDG-PETやガリウムシンチ,肝機能検査,血清Ca,眼科的評価などを行う.
IgG4関連硬膜炎
多臓器の硬化性疾患で膵臓,胆管,唾液腺,涙腺などを障害する.
高齢男性で生じやすい点が他の慢性髄膜炎とは異なる点である.
症状
頭痛と物理的圧迫による多発脳神経麻痺を呈する.
10%で神経症状を伴い,通常は全身症状に合併する.最も多い神経症状は,硬膜炎と下垂体病変である.軟髄膜病変も報告されているが,硬膜病変よりまれである.
検査
中枢神経病変が単独で生じる場合は血清IgG4は正常である可能性がある.
髄液IgG4が上昇している症例も報告されている.
病理組織では,whorls of fibrosing lesions, lymphoplasmacytic infiltration of IgG4-positive plasma cells,obliteration of vesselsなどの特徴的な病理像を呈する.
Vogt-小柳-原田病
神経症状に引き続いて,急速に視覚症状を伴う(診断が遅れた場合は眼球障害は不可逆的となる).
前駆期や眼症状発症時に髄膜症状が生じることが多く,リンパ球優位の細胞数上昇を生じる.
全例で難聴やめまい症状などを確認すべきである.
髄膜炎にぶどう膜病変を伴う場合は,他の感染症(猫ひっかき病,ライム,トキソプラズマ)や,炎症機序(神経サルコイドーシス,ベーチェット病),リンパ腫,傍腫瘍性神経症候群などを考慮する必要がある.
癌性髄膜炎
担癌患者の5~7%でみられる.血液腫瘍で5~15%と頻度がより多い.固形癌では乳癌と肺癌が癌性髄膜炎を生じやすい.悪性黒色腫でもみられる.これらの癌は,血行性に広がり,髄液に侵入する.
リンパ腫では,中枢原発のことや全身播種として髄膜へ移行することがある.中枢原発の髄膜リンパ腫はまれなCNSリンパ腫の病型である.
症状
頭痛,脳神経麻痺,神経根症,部位に応じた癌腫症を生じる.
検査
髄液検査では,リンパ球優位の細胞数増多,蛋白上昇,糖低下などがみられる.髄液細胞診やフローサイトメトリーは診断に役立つが検体量を要する(>30mm^3).初回の検出率が38~50%で,2~3回で80~90%になると報告されている.
MRIでは髄膜のGd造影効果を認めうる.
髄液検査が陰性であれば,診断のため生検を検討する.
特発性慢性髄膜炎
広範な検査を実施しても診断に至らない症例がある.
1994年にメイヨークリニックで特発性の慢性髄膜炎の症例を長期的にフォローアップした.その報告では,原因が特定できない例の85%は良好な経過をたどった.また副腎皮質ステロイドは52%で症状の改善を示した.
感染と腫瘍が除外後にステロイド使用を行う根拠となる.
近年,慢性髄膜炎を起こし得る病原体を検出する新たな手法が使用されている(Next generation sequenceなど).
慢性髄膜炎の鑑別疾患一覧 (備忘録)
今回読んだ2つの文献を元に,備忘録として作りました.