JAMA Neurologyから,一過性全健忘のコホート研究です.知識拡大のため読みました.
今回の論文
Factors Associated With Risk of Recurrent Transient Global Amnesia
論文の概要
後ろ向きコホート研究.一過性全健忘 1044例 (男性 55.1%,平均年齢75歳).
901例(86.3%)が再発なし.143例(13.7%)で再発あり.
初回発作時の発作持続時間 平均5.5時間
初回再発までの期間 4.1年
一過性全健忘 再発なし群 vs 再発あり群 での比較
一過性全健忘 再発あり/再発なしの2群で年齢,性別,誘引,前向性健忘の持続時間,地域性などに差はなかった.
再発あり群の方が初回発症の平均年齢が低い(再発なし群 65.2歳 vs 再発あり群 58.8歳, p<0.01).
再発あり群の方が偏頭痛の合併が多く(再発なし群 20.0% vs 再発あり群 36.4%, p=0.01),偏頭痛の家族歴も高い(再発なし群 18.5% vs 再発あり群 30.8%, p=0.01).
初回発作時の誘引の有無に差はない(誘引あり:再発なし群 28.8% vs 再発あり群 35.0%).
脳波所見に有意差なし.
MRIはほとんどの症例で正常ないし非特異的な変化.一部の症例(再発なし群の3.4%と再発あり群の2.9%)で,内側側頭葉に拡散低下を認めた.
論文を読んだ感想
私自身,一過性全健忘はこれまで何例か経験したことがあります.特徴的なエピソードであるため,一度経験すると忘れない疾患であるかと思いますが,頻度はそこまで多くないと感じています.
本論文は症例数1044例.非常に多い研究です.
今までは再発は少ないというイメージでしたが,論文中では再発率13.7%でした.私が思っていたより再発するようですね.
一過性全健忘との関連が疑われる誘引(運動負荷,シャワー,バルサルバ手技,性交渉,感情ストレスなど)がみられる確率も3割前後のようで,必ずしもあるわけではないようです.
一過性全健忘と偏頭痛合併という視点は初めて知りました.
次に一過性全健忘を診る際は,誘引や偏頭痛既往,家族歴など注意深く確認するようにしたいと思います.
自分も最近救急外来で一過性健忘の方を初めて見て、不思議な病気だなあと思い、参考になりました。
同じことを何度も聞いてしまうこと、例えば「ここはどこですか?今何時ですか?私倒れたんですか?」といったことに対しては、面倒な態度を見せたり、さっき聞いていたことは伝えずに、同じ返答を続けることで良いのでしょうか?
コメントありがとうございます.非常に特徴的な疾患ですよね.
患者さんは非常に驚いた様子で何度も質問を繰り返しますが,同じ返答を続けて良いかと思います.健忘が改善すると状況を理解して覚えていられるようになってきます.