最終更新 2020年10月17日
深部腱反射を診る筋と言えば,上腕二頭筋,上腕三頭筋,腕撓骨筋,膝蓋腱,アキレス腱が代表的です.それ以外にも症例によっては,回内筋や大胸筋などの腱反射を診ることあります.
今回,内側ハムストリング反射(The medial hamstring reflex)についての論文を見つけ,気になったため読んでみました.
(内側ハムストリング反射は半腱様筋腱反射(semitendisous tendon reflex)と おそらく同義であろうと思います)
目次
今回の論文
The medial hamstring (L5) reflex
Pract Neurol. 2020 Sep 14;practneurol-2020-002595.
DOI: 10.1136/practneurol-2020-002595
PMID: 32929045
症例提示
41歳男性
1週間前から高度の腰痛が始まった。大腿後外側や脛骨前面、足背への放散痛も伴った。
診察では右Laserg徴候が陽性であった.
右の内側ハムストリング反射が消失していたが、左では正常に保たれていた.腰椎MRIは椎間板ヘルニアが下降するL5神経根を圧迫している所見を認めた。筋電図は、前脛骨筋と中殿筋で動員低下を認めた(L5筋節パターン)
考察 Discussion
膝蓋腱反射(L3-4),アキレス腱反射(S1)は,ルーチンの神経診察で調べるが.内側ハムストリング反射(L5神経根)はあまり調べられていない.
内側ハムストリング反射は、仰臥位か腹臥位で調べる.
仰臥位での内側ハムストリング反射
被検者は膝をやや屈曲させる,股関節は受動的に軽度に外転・内旋位とする.
検者は,片手で内側ハムストリング腱に示指を当てながら手で膝を支える.支えている示指を打腱器で叩いて,腱反射を誘発する.
腹臥位での内側ハムストリング反射
検者は,示指を膝より頭側の内側ハムストリング腱の上に添えて,腱反射で叩いて反射を誘発する.
正常な場合は,内側ハムストリングの収縮が見られる.仰臥位での施行が最も良い.
片側で反射消失がある場合が最も有用な所見である.既報告では,内側ハムストリング反射は100%見られるらしいが,健常人でも両側消失していることがある.
内側ハムストリング反射は,L5神経根症を正確に予測する(既報告では,感度76%,特異度85%).
内側ハムストリング反射は,特に下垂足の診断で有用である.L5神経根症は,総腓骨神経麻痺と非常に紛らわしい.
鑑別のために,足関節内反(脛骨神経支配の後脛骨筋による動きのため,総腓骨神経麻痺では保たれる)だけでなく,内側ハムストリング反射も有用であろう(総腓骨神経麻痺では保たれる).
内側ハムストリング反射は,L5神経根症を疑う患者ではルーチンで評価すべきである.
Key points
・内側ハムストリング反射は,L5神経根症を正確かつ的確に予測する.
・腹臥位での診察が最も視覚的に反応を評価しやすい.
・内側ハムストリング反射は,下垂足でL5神経根症か総腓骨神経麻痺か鑑別するのに特に有用である.
( 文献より引用)
内側ハムストリングの動画
今回の文献にはSupplementとして,動画があるらしいのですが,見つけられませんでいた.代わりにYouTubeで内側ハムストリングの動画がいくつか投稿されていたため,取り上げてみます.
仰臥位での内側ハムストリング反射
腹臥位での内側ハムストリング反射
(文献内の説明と異なり,母指を当てて叩打している.叩き方が弱いのでは…?)
座位での内側ハムストリング反射
論文を読んでみた感想
内側ハムストリング反射は今回初めて知りました.以前から,L5神経に関連する腱反射がない
L5神経根症の診察で非常に役立つ反射のようであり,ぜひ行いたい反射と思いました.
腹臥位は視覚的に判断しやすいと思います.ですが,忙しい外来で内側ハムストリング反射を診るためだけに腹臥位になってもらう手間がとれるかどうか…まずは仰臥位,あるいは座位からやってみようと思いました.
これも面白い
http:// https://n.neurology.org/content/75/11/e50
2010年のNeulology-Teaching Video NeuroImages です.
での診察の動画がみられます.
Supplementaryで,L5神経根症の症例での内側ハムストリング反射(仰臥位と腹臥位)を観ることができます.フリーで観られるようなので,興味のある方はご確認ください.
下垂足について取り上げた過去記事
以前,下垂足について記事にしたことがあります.よろしければご参照ください.
One thought on “内側ハムストリング反射とL5神経根症”