最終更新 2021年9月3日
iNPHは治療可能な認知症として,国家試験でも重要疾患だったかと思います.神経内科医にとってもしっかり診療したい重要疾患の一つです.
iNPHの中でも画像所見,特にDESHは大事な所見です.しかし,必ずしもDESHを認めない症例もいる,というのはなんとなく話では聞いたことがあります.私自身も”これはDESHでは無いような気がするが…”と迷いながらタップテスト等を進めた症例もあり,画像だけで判断できない難しさを感じました.
今回はDESHがiNPHの治療反応性の予測に役立つかというメタ解析を読みました.
なんとなく,”DESHがある症例は治療反応性が良いのでは…?”と思っていましたが…結果は少し違っているようです.
今回の論文
Prognostic Utility of Disproportionately Enlarged Subarachnoid Space Hydrocephalus in Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus Treated with Ventriculoperitoneal Shunt Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis
AJNR Am J Neuroradiol. 2021 Aug;42(8):1429-1436.
DOI: 10.3174/ajnr.A7168
PMID: 34045302
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34045302/
内容
10の研究が組み込まれた.症例は合計で812例.各研究での治療指針:4つの研究は国際ガイドラインに基づいて治療.3つの研究は日本の正常圧水頭症ガイドライン第2版に基づいて治療.3つの研究は不明.
(DESHの定義:脳室拡大,高位円蓋部狭小化,Sylvius裂拡大の3つ全てを満たす)
DESHは44%にみられた(95%CI 34-54% (Cochran Q= 66.84; P<.001; I2=87%)).
DESHの頻度は国際ガイドラインに基づいた研究より,日本のガイドラインに基づいた研究の方が高い傾向があったが,有意差はなかった(国際 vs 日本のガイドライン: 43% vs 52%. P=.38)
DESH所見の治療反応性予測の感度は59%(95%CI:38-77%),特異度66%(95%CI:57-74%)で,AUC 0.67(95%CI: 0.63-0.71),PPV 80%,NPV 41%.
結論:iNPHでのDESH頻度は比較的低い.治療反応性への予測能は低い.