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燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

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片麻痺と失調, 眼病変,口腔内潰瘍を生じた36歳症例

Posted on 2022年3月1日2022年3月1日 By 雪むかえ 片麻痺と失調, 眼病変,口腔内潰瘍を生じた36歳症例 へのコメントはまだありません
医学, 学習, 脳神経内科

目次 [hide]

  • 1 今回の論文
    • 1.1 Section1
      • 1.1.1 Question
    • 1.2 Section2
      • 1.2.1 局在
      • 1.2.2 鑑別疾患
      • 1.2.3 検査
      • 1.2.4 生化学検査
      • 1.2.5 髄液検査
      • 1.2.6 眼フルオレセイン造影
      • 1.2.7 精査を踏まえて鑑別をしぼる
      • 1.2.8 Question
    • 1.3 Section3
      • 1.3.1 2つの診断基準
      • 1.3.2 Question
    • 1.4 Section4
      • 1.4.1 治療
      • 1.4.2 予後
    • 1.5 考察
    • 1.6 関連

今回の論文

Clinical Reasoning: Rare Cause of Hemiparesis and Ataxia in a 36-Year-Old Man

Neurology. 2022 Feb 8;98(6):251-255.
doi: 10.1212/WNL.0000000000013142.
PMID: 34862320

https://n.neurology.org/content/98/6/251

Section1

36歳 男性

3年前に霧視と有痛性内口腔内潰瘍,非掻痒性の皮疹があった.
1週間前から頭痛,構音障害,右顔面と右半身の感覚障害が出現した.

診察では,口腔内アフタ潰瘍,体幹と四肢に白色丘疹,右網膜出血がみられた.
神経診察では,右顔面に中枢パターンの筋力低下が見られ,構音障害や右半身の麻痺,右半身感覚障害,右上肢失調も認めた.

Question

  1. 局在は?
  2. 鑑別疾患は?
  3. 追加精査は?
     

Section2

局在

上位運動ニューロン性の顔面筋力低下から,皮質橋路の障害が考えられる.

右半身の失調があることから,脊髄小脳経路の障害が示唆され,その病巣としては,対側の中脳/延髄 or同側や対側の橋 での交差部位,対側視床,同側小脳などが考えられる.

痛覚低下は対側の脊髄視床路の障害が示唆される.

これらのことから,内包を含む視床病変,橋病変,皮質脊髄路・脊髄視床路・脊髄小脳路を巻き込む多発病変などが想定される.

鑑別疾患

臨床像から,初期の鑑別疾患は,感染,様々な若年性脳卒中(血管炎,結合組織病),腫瘍など.

検査

頭部の単純CT:左基底核から中脳の上内側や橋,小脳脚へ伸びる低信号を認めたが,出血は認めず.

造影MRI:左中脳から橋に広がる拡散障害病変を認めた.T2強調画像では,左基底核や内包後脚,中脳,橋,上小脳脚,橋延髄境界部,前交連に高信号を認めた.

左脳幹にびまん性の造影効果と,ヘモジデリン沈着を認めた.

CTアンギオグラフィー:異常なし.

生化学検査

血糖,電解質は異常なし.血清感染マーカーは異常なし(HIV,HBV,EBV,HCV).プロテインC/S,アンチトロンⅢ欠損症,抗リン脂質抗体,高カルジオリピンIgG/Mなどの血栓傾向は異常なし.ANCAは陰性.赤沈とCRP,リウマチ因子は正常範囲.

髄液検査

多核球優位の細胞数増多(36個/μl),軽度蛋白上昇 47.5mg/dl.オリゴクローナルバンドは院sネイで,IgGインデックスは正常.髄液EBV,VZV.VDRL,JCV,HHV6のPCRは陰性.髄液クリプトコッカス抗原は陰性.細胞診は陰性.

眼フルオレセイン造影

両側慢性脈管変化と,右硝子体出血,左網膜瘢痕を認めた.

精査を踏まえて鑑別をしぼる

拡散障害とびまん性造影効果は,血管障害でよくみられる.しかし,初期の脱髄や腫瘍,感染でも出現する.炎症性と腫瘍性の機序による血管障害は原発性中枢性血管炎や神経サルコイドーシス,神経ベーチェット病,血管内リンパ腫なでを含む.他の炎症性機序としては,NMOSDsやBickerstaff脳炎などが挙げられる.

本例は髄液検査と画像検査から,炎症性機序が考えられた.また,眼所見,口腔内潰瘍などから神経ベーチェット病が考えられた.針テストで皮膚過敏性を認めた.

Question

  1. 神経ベーチェット病の診断基準は?
     

Section3

2つの診断基準

  • International Study Group (ISG):1990年に提唱した基準:感度81%,特異度96%.
  • International Criteria of Behcet’s Disease (ICBD):2014年に提唱した診断基準:感度93.9%,特異度92.1%.

Question

  1. 神経ベーチェット病の治療と予後は?

Section4

治療

初期治療として経静脈的にメチルプレドニゾロン1000mgを3~5日間投与し,経口ステロイドの切り替えて3~6ヶ月で漸減する.良好なランダム化試験がないため,最適な免疫抑制薬の種類や期間は未だ不明である.アザチオプリンやミコフェノレートモフェチル,シクロホスファミド,TNF阻害薬なども使用される.

予後

神経ベーチェット病の予後は様々である.脳幹病変がある症例は,頭痛などの軽度の症状の症例よりも予後が悪い.他の予後不良因子としては,若年,男性,HLA-B51陽性などである.

本例は高用量メチルプレドニゾロンで5日感治療し,その後プレドニゾロンを緩徐に漸減した.左麻痺や改善し,2ヶ月後には独歩可能となった.長期の免疫抑制薬としてアザチオプリンを使用した.造影MRI再検し,脳幹病変と左視床・内包病変は改善した.眼科で手術が行われた.6ヶ月後には汎ぶどう膜炎を生じ,TNF阻害薬へ変更した.
 

考察

ベーチェット病の5~30%で中枢神経病変を生じる.頭痛が最多で,ついで錐体路症状が多い.
MRIでは,上部脳幹から視床/基底核に広がる,大型で癒合性の非対称性なT2異常信号を呈する.小型の拡散障害病変,ガドリニウム造影効果,ヘモジデリン沈着などは,浮腫性の神経ベーチェット病変が示唆される.

本例の診断に際して,ICBD基準と,ISG基準を用いた.ICBDを併用することで感度を上昇させることができる.

関連

タグ: MRI neurology ベーチェット病 神経 診断 論文

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